バッテリーⅡ(あさのあつこ/角川文庫)

バッテリー (2) (角川文庫)

■粗筋
 中学生になり、野球部に入部した巧と豪。二人を待っていたのは、監督の徹底管理の下、流れ作業のように部活をこなす先輩部員たちだった。監督にはむかい絶対の自信を見せる巧みに対し、豪はとまどい、周囲は不満を募らせていく。そしてついに、「ある事件」が発生する。


■感想

 怖い、と思った。何がと言うと、それは筆者のあとがきだ。
 ここまで真剣に著書について熱く語れる小説家を、ボクは知らなかった。彼女は言う。彼ら登場人物を捉え切れないまま、終わってしまったと。それでも悔いは残さない。こうして本をまた読んでみて、手に入れるものを得て、もう一度書かなければならないと、強く主張している。これだけの小説を書いて、なお彼女は満足出来ないのかと、ボクは思った。アマとプロの違いは、こんなにも遠いものかと思えるほどに。少なくとも、以前から確実に無くなってしまったという自負や野心、安堵感や充足感を得たいと願うあさの女史。彼女より、ボクは圧倒的に負けている。何かもう、いろいろと。熱い……凄い!
 さて、本文だが。これはハッキリ言って、前回を大きく上回る厚みと仕上がりになっている。巧の「自分自身を信じること」が一貫して守られているところに芯を置きつつも、前作からはハッキリとした成長の後も見られる。例えばそれは豪との信頼関係。まさにバッテリーにふさわしい変化である。
 周囲からの軋轢、現実へのとまどい、焦り、恐怖。そんなものを彼はどう捉えていくのか。それを追うだけでも、この作品は絶品の味わいを醸し出している。だがしかし、それ以上に凄いのは、それを250ページという限られた枠内で表現しきれているところだ。並大抵の努力では、こんなに上手く書けないだろうと思う。これがプロか……ッ。そして何より熱い! 野球はほとんどしないけど、これはどの野球マンガやアニメにも引けを取らない……ッ。
 心が熱くなる作品。激お薦め。ぜひ買って熱くなるといいと思います。