『天国までの百マイル』(浅田次郎/朝日文庫)

 天国までの百マイル (朝日文庫)

■粗筋


 バブル崩壊で会社も金も失い、妻と子どもとも別れたろくでなしの中年男、城所安男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるという、サン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひらすら駆ける――親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く、感動の物語。


■感想


 マイ読書ランキング、Top3に入る傑作。泣きました。この作品に出会えてよかった。
 何といいますか、ボクが目指す文章の全てがここに凝縮されているような作品でしたね。考え抜かれたストーリー、キャラたちの創り方、精錬されつつ、その味を出すシンプルな文体、そして最後に読者を引き込むカタルシス。最高。言う事ありません。それに、プロとしてのレベルの高さも確かに感じられます。この作中では医療現場――主に外科と内科方面で相当の専門知識が使われています。これを調べるだけでも、かなりの努力があったはずです。もちろん医療ということで、死に関するところも扱っており、それを決して独りよがりでない内容に仕上げている。これまで浅田次郎という作家にめぐり合わなかったのを悔やむくらいに、この作品にボクが目指す全てがあった。もうダメ、惚れた。ボクの作品に少しでも感銘を受けてくれた人がいるのでしたら、必読ものです。というか読んでくださいといいたくなるくらい。この前に『暗闇の中で子供』(舞城王太郎/講談社)も読んだけども、こちらが全部霞んでしまうくらいでしたと。なのでこっちは省略(ぉ とにかく、激お薦め。


 私は、おかあさんの五番目の子どもです。
 ずっとそう思ってきました。


 ありえん。マジ泣いた。