『十八の夏』(光原百合/双葉文庫)

十八の夏

■粗筋


「恋しくて恋しくて、その分憎くて憎くて、誰かを殺さなければとてもこの気持ち、収まらないと思った」――切な過ぎる結末が、最高の感動を呼ぶ物語。第55回日本推理作家協会賞を受賞し、「2003年版このミステリーがすごい!」第6位にもランクインした珠玉の連作ミステリー、待望の文庫化!!
 本編は『十八の夏』『ささやかな奇跡』『兄貴の純情』『イノセント・デイズ』の四作からなる連作小説。全て花をモチーフにした作品に仕上がっている。


■感想


 毎回思うんですけども、ボクの粗筋ってあんまり粗筋してないんですよね。気にしたら負けなのか。
 さて、今回はちょっと紹介するかどうか悩んだ作品です。元々、ここには自分の気に入った本を取り上げようと思っているんですけども、この連作っていう形態が悩ましい。以前に紹介した(気がする)『MISSING』とかなら、まず躊躇うこともないんですけども。出来がいいのと悪いのがあると思うんですよね、これ。
 よかったと思うのが前者二つ。特にこの本のタイトルにもある『十八の夏』はかなりよかった。ミステリーといえるかどうかは、それ程詳しくないボクにはちょっと説明しづらいんですけども、少なくともストーリーが綺麗。ファウストみたいなやつよりは、こっちのほうがボクは好きですねぃ。ほのぼのINミステリーぐらいが、肌に合うのかも。途中、主人公の姉と意見交換しているところは、まぁちょっと筋に合ってなくてショボンしましたが、それ以降はヒロインの紅美子と主人公とのやり取りが甘酸っぱくてよろしかったかと。ラストも美しかったです。『ささやかな奇跡』でも同じような感想でした。
 逆によろしくなかった後者二つ。『兄貴の純情』はちょっとキャラが前面に出すぎていて、ストーリー薄っぺらでした。プロに求めているのは、もっとクオリティの高い運章ですからね。これはこれで楽しかったですが、そこで終わってしまうような感じでした。もう一押し。『イノセント・デイズ』はまるっきりダメでした。この人はミステリーを書こうとして書くタイプにしちゃいけないと思うんですよ。それが今回は見事に失敗している感があります。印象に残らなかったので、感想もついついしょぼめに。
 なのでまぁ、読んでみようと思った方は、前者二つをボクからお薦めです。