『コズミック』「流」「水」&『ジョーカー』「清」「涼」(清涼院流水/講談社)

コズミック流 (講談社文庫)コズミック水 (講談社文庫)
ジョーカー清 (講談社文庫)ジョーカー涼 (講談社文庫)


■粗筋


「一年に1200人を密室で殺す」警察に送られた前代未聞の犯罪予告が現実に。一人目の被害者は首を切断され、背中には本人の血で「密室壱」と記されていた。日本全国恐怖に陥れた大量密室連続殺人事件が続く。同様の殺人を繰り返す犯人「密室卿」の正体とは? 驚愕すべき動機、トリック、真犯人は? 推理界で大論争を巻き起こした超問題作(以上、『コズミック』)。
 死体装飾、遠隔殺人、アリバイ工作。作中作で示される「推理小説の構成要素30項」を網羅するかのように、陸の孤島幻影城で繰り返される殺人事件。「芸術家(アーティスト)」を名乗る殺人者に、犯罪捜査のプロフェッショナルJDC(日本探偵倶楽部)の精鋭が挑む! あまりにも不快なぞと暗示に隠されていた驚愕の真相は?(以上、『ジョーカー』)
 本作は出版社(作者?)のほうで「流」→「清」→「涼」→「水」と独自の順番を設け、その順で読んでもらうことにより生涯でも未体験の読了感を味わうことが出来ます、と明記されている。


■感想


 …………。
 ちゃぶ台をひっくり返すAAを貼り付けようかと思ったが、大人気ないので止めておく。


 えー、ボクはこの講談社が示すような順で読んでいったのですが、確かに「生涯でも未体験の読了感」を味わうことが出来ました。何だこれは。何だこの不安定感はっ。と、思わず初の本を壁に投げつけるという行為をしたくなりました。いい意味でも悪い意味でも。借り物だからしませんでしたが。そんな読後のボク。
 そして次に、ここで謝っておかないといけないのですが、ボクは以前に『コズミック』「流」を読んでいて、それのみの判断で流水氏をラベリングしておりました。ああ確かに奇抜な書き方(「流」ではぶっちゃけ、19もの事件の箇条書きが永遠と続いています。)するなぁと。しかしまぁ、こうやって読んでみると確かにこの人が今の流れを作った新感覚派の始祖、といっても過言ではないでしょうね。舞城氏、それに西尾氏や佐藤氏、他にも挙げればいろいろいますが、とにかくこの流水氏はその中でもまたかなり異質。異質ばかりの人たちの中でさらに異質。そりゃあ問題作として扱われるだろうなぁとしみじみ思ったところです。
 では内容のほうに。「読者への挑戦状」から始まる『ジョーカー』ですが、これはまた凄い仕掛けしてますね。真相が二転三転どころか、六転ぐらいしてようやく辿りつく(?)感じ。ここまでやらんでも、というかよくここまで考え付くものです。流水氏は「アナグラム」がよっぽど好きみたいですね。異常なほど作品一つひとつに大なり小なりのアナグラムが見え隠れしております。そのせいもあるのか、作品そのものが不安定です。常に綱渡りをして読んでいるような錯覚。これがボクは大変好きくない。何かこう、今まで読んできた本を根底から覆すような違和感、言葉にするとそんな感じでしょうかね。いやぁあかん。よってストーリーでは採点不能
 しかし、キャラのほうは好きです。JDCを始め、「関西本格の会」やらの個性は強く、同人誌でも一部大人気であると言うのも頷けます。まぁ少し名前負けしていて薄っぺらいっていう印象もありますがね。概ね好感です。
 あとはミステリ入門、としても楽しむことが出来そうな一冊。ところどころで基本知識が入っているので、ボクみたいな人にはいいかも。ただまぁ、最初からこれ読んだら、ちょっとミステリ嫌いになりそうな雰囲気はあるかと思います。
 表記のほうはどうかというと、これが結構読みづらい。これはいろいろな理由(濁暑院氏が書いた「作中作」であるから、焦りもあるだろうし許されるとか、流水氏が独自の方法でわざとこうしているとか、そもそも単なるミスであるとか)が考えられますが、どうなんだろう。リズムよくないことは間違いないんですけども、それも狙いなのだろうか……。もしそうであるならば、流水氏はかなりのツワモノとしてみていいと思います。総じて甲乙つけがたし、ただ非常に不安定な気持ちになる本作でした。
 次に『コズミック』。ここまで読んでみて『ジョーカー』のほうがひっくり返ります。この野郎、とボクが叫んだのは自然なんでしょうか。物凄い腹たったような爽快感があるような……また不安定な気持ちになりました。とにかく続けましょう。
 こちらが本来は最初に読まれるべき作品ですが、本当に処女作なのかこれ、と疑いたくなる作品。大風呂敷も大風呂敷、犯罪が世界レベルですから。しかもあんな終わりかたして読者をなめてるのかこんちくせう、という当初のボク。綺麗に纏まっている、とは言いがたいですね。終盤(「松尾芭蕉」と九十九十九たちとのやり取り)はいらなかったかなぁと思いますし。どんでん返し、それとアナグラムを好んでいるのも一緒ですね。キャラ、表記のほうも『ジョーカー』と同じような感想でした。こんなもんよー書いたな、常々。ああ不安定だ。
 最後に読む順番ですが、まぁこれじゃなくても普通に読んで、ふーんと思える内容。ただボク的にはこれに従ったほうがより不安定な気持ちになれること請け合い。感想でいくつ不安定、と書いたかわかりませんが、とにかく清涼院流水の作品はボクの中で「不安定作家」と位置づけられました。お薦めは、ちょっと出来ません。ハマる人はハマるだろうし、ハマらない人はどこまでも嫌えるタイプ。ボクの位置、それもまた不安定なところであります。ああ何だこれ。何だこの爽快感と不快感。入り混じってて明確な判断はつけられそうにありません。


 清涼? うるせいYOぅっ。
 流水? ニュース一編見直せっ。


 (ノ`д´)ノ~┻━┻