「雲の向こう、約束の場所」

雲のむこう、約束の場所 オリジナル・サウンドトラック

雲のむこう、約束の場所 オリジナル・サウンドトラック

「雲のむこう、約束の場所」complete book

「雲のむこう、約束の場所」complete book

■粗筋
 日本が南北に分断統治された、もう一つの戦後の世界。ユニオン領下の北海道に建設された謎の巨大な「塔」が、ひそかに稼動を開始した。米軍占領下にある日本・本州には、その「塔」が建設された本当の目的を知る者はまだ誰もいない。
 津軽海峡をはさんでもなお視界にくっきりとそびえるその「塔」に、憧れとも畏敬とも知れない念を抱く青森の少年、藤沢ヒロキと白川タクヤ。彼らは自分たちの力であの「塔」へ飛ぼうと決意する。彼らはまた、同級生の沢渡サユリにも「塔」と同じような憧れの気持ちを抱いていた。若かりし中学時代の約束、友情、夢、けれど発病と決別。世界は何度でも彼らを裏切る。違う道を進み、互いに反発する二人。さらに世界情勢は悪化の一途をたどりつつあり、開戦の危機も目前に迫っている。
「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか、だ」
 あの雲の向こうにある、約束の場所。彼らは何を考え、思い、忘れ、応えようとしていくのか。独特の世界観で綴られる、アニメーション映画。

■感想
 さて、こちらは上記と全く正反対の大絶賛。実にわかりやすいボクであります。概ね、ボクが涙を流す作品は大抵、周囲を強引に巻き込みます。今はAnemosがはくをTO・RI・Oにしてやろうと目下検討ちうでありますが、まぁそれはともかく。騙されたと思って、観た方がいいです。これは激お薦め。では、こちらは簡単に終わらせてしまいましょう。
 まず、新海誠監督のセカイというものが、ボクの心をガッツリ掴んで離しませんです。この作品にはいくつかのキーワードがあると思うんですけども、その中でも好きなのが「声」。一人ひとりの心情、主張、言葉、そういったものがどれも熱い。その伝え方も大変に素晴らしい。ヒロキ、タクヤ、サユリ、その他サブキャラの一言一言がこう、精錬された槍の如くに心をぶすっと刺すような感覚。これはもう、主観ですがね。大変に揺り動かされました。ストーリーは、完全に全てを語っておりません。以下ネタバレ風味で、ボクなりの現在における解釈をつらつらと書いてみます。観た方だけ反転よろよろー。
 冒頭のヒロキが出てくるシーン。後述しますが、ボクが買った資料集に、あれから13年後の世界とありました。彼も30歳になったわけですな。新宿の駅から会社にも行かず、単身で青森の廃駅へと向かいます。ここで思うのは当然、タクヤもサユリも出てこないところ。これ、タクヤはともかくサユリは「世界から消されてしまった」、すなわち亡くなってしまったのではないかー、と思います。いきなりぶっ飛んでラストになっちまいますが、ヒロキとサユリが二人だけでヴェラシーラで「約束の場所」に飛んで行くシーンのあたりで、サユリ(とタクヤ)が「目覚めの予感に、身体が震えているのがわかる。どうしてだろう、今は期待よりも恐れのほうが強い……」という言葉があります。これ、まさにその後にサユリが記憶を忘却してしまっていることに関していますですよね。まぁ適当な理由をつけるのなら、平行世界からの膨大な情報量に対して彼女の脳が限界を超えてしまった、とでもなるのでしょうか。とにかく、忘れてしまいます。んで、変ナルコレプシー症から覚めたサユリも、その後記憶を戻さないまま数年後に逝去。そうして最初に戻り、ヒロキの「いつも何かを失くしてしまう予感があると彼女は言った。当時、中学生だった僕に実感が持てるはずも無かったけれど――」にかかってくるのではないかなーと。そういった意味では、この作品はボクの解釈によるとアンハッピーな結末。けれど、最後の一言を言った瞬間では、確かにハッピーな結末だったわけです。……どちらかというと、ボクの稚拙なこの解釈は外れて欲しいものがありますの(;´Д`)はい。
 うに、本音を言えばもっと語りたかったですが、風邪気味のためここで断念_| ̄|○ 他にも「約束の場所」ってなんだったのー、とか、平行世界ってなんだったのー、とかいろいろ考えたいところでありましたが、まぁそれは機会があればということに。

 終わりー。ほんで、キャラ、背景を含めた絵、音楽、それらを作る技術、全て一級品。いつかドハマりしていた「新世紀エヴァンゲリオン」に似た感覚を覚えます。巷では「第二の宮崎か?」とまで言われていますが、老若男女を問わず楽しめるという作品ではないかもないかも。でもそうなって欲しいなぁとは強く思います。凄すぎる才能、溢れるばかりの情熱、とても好感触。サントラ、そしてコンプリートブックまで買ってしまいましたと。つぎ込んだお金は、そろそろ諭吉さんも見え隠れですよ……? んでもま、いい買い物ですし、満足しております。サントラのお薦めは当然、「きみのこえ」。コンプリートブックの見所は、キーワードノート。DVDならもちろん、全部DEATH! ぜひ観ましょう。ぜひ観ましょう。ぜひ観ましょう(´∀`)